怪物の都市のルーツ 

892c22222bd1f4751a4bc301b068c380 人潟るけさんからのエピソード

怪物の都市はどうやって生まれたのか


18XX年

本来ユーマ帝國の怪物の都市は人間のみで構築された平和な都市だったのだが、ある時「人間では無い何か」もたくさん出現するようになっていった。そこに居た人間達は当然のごとくそれらを「気持ち悪い」「私達人間の敵かもしれない」と言いだした。
それだけならまだマシだったのだが、次第に「怪物の犠牲者が出た」「この怪物は人間を脅かす侵略者だ」という根拠も無い噂が広まっていった…。その結果、次第に人間達はそれら怪物を見かけ次第殺すようになっていった。
何か人間に悪い事をやっていようがなかろうが、人間達は「この都市の平和のため」に容赦はしなかった。

ある時、人間にひっそりと紛れて暮らしていた「シルド・ヴァンピール」という吸血鬼が居た。その吸血鬼は晴れた日でも容易に外出が出来る特別な能力を持っていた事から周りに吸血鬼だとバレる事は無かった。外部の世界に居た時は普通に人間の血肉を食らって生きてきたが、怪物だとバレないように普段は人間が食する牛肉・鶏肉・豚肉とそれらの血を食べる事で凌いでいた。なのでほぼ人間として生きていく事でこの都市でどうにか暮らそうと考えていた…。

しかし、彼は耐え切れなくなっていた…彼は自分と同じ怪物が次々と惨殺される光景を日々目にしてきた。また彼にはそれらの怪物の霊が見え、話す事も出来た。
怪物霊達が彼に向けて決まって言っていた事は…

ただ人間の前に現れただけで殺された」というものだった。

「この現状を、どうにかしなければ…」

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ある時彼は大きな集会場の建物に『怪物をイチ早く壊滅させる方法について教えます!』という広告を貼り付け、そして人通りの多い駅前などで配った。
当日は一時間と経たず、室内がパンパンにおさまる程の都市の人間達が大勢集まってきた。

予想以上の人間の数に圧巻されながら、彼は人間達に向けてこう言った

「皆様、怪物って怖いですよねぇ~」

((全員がうなづく))

「皆さんにとって一番恐ろしい怪物って、なんですか?」

「異形の怪物ですかね」「非常に気味が悪いもの」「話しかけられた時は即そいつを撃ってやったわ」

「ふむ…そうですか」

「…では、その怪物達の悪いところは?」

「夜道で私を追いかけてきた…」「悪臭がする」「悲鳴のようなものを発するわ」

「…それ怪物達は本当に悪い事をしてましたか?」

「え?存在自体が不快そのものじゃないですか」「私達を食らうために襲ってるに違いない」

「・・・・・・・」

「じつは私、霊が見えるんです」

「「「ええ!?」」」

「あなた達人間に殺された霊達はこう言っていましたよ…」

〈僕は人間に遊んでもらいたくて近づいただけなんだ…〉
〈人間だって悪臭酷い人は居るだろう!?人間達は悪臭がするだけで殺す生き物なのか!?〉
〈私達は存在そのものが不快…か…私達は人間そのものが不快だと思ったよ…〉
〈声をあげただけで殺すなんて酷いや…人間の赤ちゃんの声は許されるのに?〉

「・・・このように、怪物達に、罪は無いんです。あなた達を襲うつもりなんて無かったんです。むしろあなた達と同じように振舞いたかっただけなんですよ」

「「「・・・・・・・」」」

それを聞いた人間達は一斉に静まり返った。
自分達の行いをようやく反省したのかと、彼は思った。

しかし

「あんな恐ろしい怪物がそんな事を思うはずなんて無い!!」
「この人が言っている事は全部出まかせだ!!」
「怪物の味方をするお前は一体何者なんだ!?さてはお前も怪物だな!?」

「・・・・・・・」


「ハハハ、そうですか……そうですよ、私は『吸血鬼』という怪物です。私は本来人間の血肉を好む種族なんです…でも、私は人間を襲いませんでした。私は人間の味方でもあり怪物の味方としての立ち位置についていたから、今回このような集会を行ったんです…それなのにあなた達は……」

「やはりあなたも怪物だったのね!!」
「殺してやる!!!」


バンッ バンッ バンッ

・・・・・・

一人の人間は容赦なく彼に銃を撃った。しかし、彼は無傷だった。被弾音では無く彼の足元に銃弾が転がり黒い塵になって消えていく音だけが、会場内に鳴り響いていた。

実はある吸血鬼にしか持てないとされている暗黒魔術を駆使出来る彼には、銃攻撃など効かなかった。

その光景を見て騒然をする人間達。そして彼は目つきが変わり、赤い瞳はより紅く染まっていった……

「人間達…いや、人間共…私はあなた達に失望しました…私はあなた達にチャンスを与えたのにそれすらも踏みにじるんですね。」

「今回の集会のである『怪物をイチ早く壊滅させる方法について教えます』の本当の理由…それは…」

バタン

バタン


「「「!?」」」

集会場のドアと窓が彼の魔術によって硬く閉ざされ、照明は消され真っ暗になった。

人間達は慌てふためいた…


そして…彼は会場に響き渡るぐらいの声で叫んだ

「この都市で最も恐怖で狂気的である怪物!!それは人間共、お前たちだ!!!」

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〈ありがとう、人間を撲滅してくれて…〉

「礼を言うほどでも無いですよ…」


集会所の電気を付けると会場内には強い魔術で殺されたと思われる人間の死体が無造作に散らばっており、床は一面血で真っ赤に染まっていた。


「私は『本当の怪物』をこの手で消しただけです…この会場を大幅に汚してしまったので後で死体処理を施しておきますね」

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その後、彼はこの都市を救った英雄として讃えられ、いづれこの都市は怪物の住民が一番住みやすい所として怪物の都市と命名され、そしてこの世界の名前も、怪物や珍獣や未知の何かがたくさん集まる世界という事でユーマ帝國という名前も彼によって名付けられた。
そして彼に惹かれた女性の吸血鬼と結婚をし、その後繁栄していったのが吸血鬼一族であった。
かつてこの世界の入り口付近に、彼の銅像が立っていたのだが、その後何者かによって壊されてしまった。犯人が何者なのかは現在でも分かっていない。

end