食文化 

Missing thumb さとはら さきさんからのエピソード

登場:月乃、みく、魅薙、昴
月の都を出て、一部の兄弟たちとルームシェアを始めた月乃。何ヶ月か過ごした頃、自分の身体の変化に気付き…。


おかしい。食べてる量は月の都(ヒオン)にいた頃と同じはずなのに、太った。
(なん)で…?」
月乃(つきの)は元々燃費が悪い。すこぶる悪い。初めて食事を共にした者からは大抵、この小さな身体のどこにあの大量の料理が消えたのだと驚愕されるし、引かれることも少なくない。それでも贅肉は付かなかったので、太らない体質なのだと思っていた。それが、月の都(ヒオン)を出てからむにむにしてきた。どういうことだ。

腹を睨んでいる間に、今日のおやつが完成したようだ。キッチンから魅薙(みなぎ)の歓声が聞こえる。
この喜びようはチョコのお菓子かな。みくちゃんのお菓子、美味しいんだよな〜。
ダイニングに向かうと、チョコケーキを頬張る兄弟と、ポニテを解くみくが見えた。


「そりゃ容積が同じでも摂取カロリーが高くなったら太るでしょ」
ようせき?摂取かろりー?難しい言葉使わないでよみくちゃん。

「ナヤプの食事って雑穀や野菜が中心でしょう?」

月の都は、よその人からはナヤプと呼ばれる。星の都(リーティア)がレティニアと、時の都(ヴィルタ)がウィルタと呼ばれるように。
その月の都は、陸の孤島だ。四方を断崖絶壁や切り立つ山々に囲まれ交易はほとんど無い。必然的に食べ物は自給自足、地産地消が基本となり、農業がその柱である。

「聞いてる?」
「ん、聞ーてる聞ーてる」
「ならよし。で、あんた星の都(ここ)で暮らし始めてから食生活変わったでしょ。脂っこい物や甘いお菓子が増えてるはずよ」
「そうなの?」
「ナヤプの食事はヘルシーだって有名よ」
「へるしー」
「カロリーが低いってこと」
「そのかろりーって何」
「身体を動かすエネルギーとして使われるものよ。使いきれない分は体内に蓄えられて、太るわ。そして脂質と糖質、すなわち脂っこい物と甘い物は、他の物よりカロリーが高いの。…理解できた?」
「えーと、へるしーなのがかろりー高いのになって、かろりーがいっぱい増えたからエネルギーも増えて、けど使うエネルギーの量は変わってないから余ったのが蓄えられた……?」
それで、太った……?

「なんで教えてくれなかったの…」
「ごめんなさいね、知ってるものだと思ってた」
「知ってたらおやつにラーメン3杯食べなかった」
「それおやつの量なのか…」
「るーちゃん、つっきーの胃袋に常識は通用しないよ☆」