人形の町 

Missing thumb さとはら さきさんからのエピソード

時音に連れられて知らない町まで来た綸亜。妙な違和感を抱きつつも着いて行くと、大量の人形をプレゼントされる。


リオちゃんとわたしはいつも一緒。ある日、時音(ときね)お母様がわたしだけを呼びつけた。

馬車で何時間もかけて着いたのは、知らない町。通りのお店にはOPENの看板。窓もカーテンも開いていて、心地よさそう。枯れかけの草花と、砂埃はどうかと思うけど。
静かな町の中、時音お母様の後をただただ追いかけた。毅然とした背中。きっちり一定の歩幅。わたしには少し速いので、遅れないように、でもはしたなくならないように、必死に早歩きした。

少し立派な建物に着いた。糸目のおじさんが大きな箱の前でニコニコしている。
「ようこそいらっしゃいました。本来は(わたくし)が出向くべきところをご足労くださり…。」
ああ、大人の会話だ。つまんないなあ。お人形か、リオちゃんがいてくれたら楽しいのにな。

(中略)

こんなに精巧なお人形、王都でも見たことない。今にも動き出しそう。
「本当に全部わたしがもらっていいの?」
「ええ。好きに遣いなさい。」
さっそく人形のひとつに、魔力で作った糸を繋げる。『こんにちは。』まずは挨拶。続いてお散歩。ジャンプ。それからダンス。わたしの思うままに動かせる!
箱の中身はたくさんのお人形だった。そのどれもが、とっても細かいところまで作られている。
時音お母様はおじさんと話すことがあるんですって。おじさんと時音お母様にお礼を伝えて、お人形達と一緒にお屋敷まで先に帰った。早くリオちゃんにも見せたいな。

「本当に、可愛い子。」
女城主が不敵な笑みを浮かべる。(あざけ)りの色すら見える。
「あのご様子では、何も気付いていらっしゃいませんね。」
「そのようね。利織(リオ)がいたら気付いたかもしれないけど…。綸亜(リア)ったら本当に、馬鹿な子。」
趣味の悪い女だ。しかし、上客であるのも事実。
「ずっと邪魔だったのよ。ここの愚民はあの女を支持してる。もう死んだ女のことを。──町民人形化の協力、感謝するわ。これは報酬。」
ズシリと重い袋をうやうやしく受け取る。逆らいさえしなければ、良いカモだ。
「今年中にちょっとした戦争が起こるわ。綸亜(リア)は大して戦えないけど、人形があるなら話は別よ。ふふふ。たくさん、壊れてしまうでしょうね。」
元が人間だと知らぬまま、たくさんの人形を壊して(殺して)しまうでしょうね。ああ、いつ教えてあげようかしら。