信楽 伊織【1】 

2671f3b84578e900b71457fbe4045c68 TAKAmeさんからのエピソード

TRPGの記録・※シナリオネタバレ有・話の流れを自然にするため&あまり覚えていないため、ねつ造含まれます


【猫の小道】
 いつもの朝、ベッドで寝ていた信楽伊織は身体を起こす。
顔を洗ったり一通りの朝の日課を終えた後、適当に作ったベーコンエッグパンを食卓に置いてテレビを付けた。
朝の日課の一つ、直近のニュース番組。
ここではない遠くの地区の殺人事件について、政治について…。
ニュースの一つに、この家の近くの公園で猫の死骸が見つかったことが取り上げられていた。
猫の死骸なんて、野良猫がいれば出てくるものだろうと思ってみていたが、どうやら最近この地区周辺で飼っている猫が行方不明になっているらしい。
物騒だが、猫を飼っていない俺には関係のない事だ、とベーコンエッグパンを食べ終えてから、支度をして外に出た。

 この日はカフェで女性ジャーナリストと待ち合わせをしていた。
<幸運・成功>
伊織はそのカフェへ徒歩で向かう途中、T字路に差し掛かったところで視界がぐにゃりと歪んだ気がした。
不思議に思って立ち止まるが、気のせいだろうと再び歩き出したところで、一瞬、急に人が現れてぶつかりそうになる。
しかし、ぶつかる瞬間、その人影は何もなかったかのように目の前から消えたのだ。
幻覚か?疲れているのか?不可解な現象に遭遇した伊織は首を傾げた(SANチェック)

 カフェに着いて席に座った頃に、丁度その相手の女性も到着した。
名は柊 明梨。
ジャーナリストをしており、好奇心旺盛な性格で怖いもの知らずなため、様々なスクープに首を突っ込んでいる。
そんな彼女とはこうしてたまに会って、情報交換をしている。
と、いうのも、記者やジャーナリストは流行りに敏感で、有益な情報を入手しやすい。
探偵を名乗って情報を入手するのは容易かった。
交換条件として、こちらも手に入れた話を伝えているが、柊には結構ウケていた。
カフェで軽い飲み物を頼み少し話をした後、二人で図書館へ行くことになり、席を立って外へ出た。

 伊織と柊の二人で図書館を目的地に、街中を歩く。
交差点を渡るとき、伊織はふと行き交う大勢の人混みの中にいる黒い人物が目に留まる。
その人物は黒い服に黒いズボンで、どこかぼんやりとした印象。
<目星・成功>
黒いシャツとズボンがその白い肌とコントラストを作っている。
長身でやや猫背、髪はくせっ毛で所々が寝癖のように跳ねているのがわかる。
目の下にはくっきりとしたくまがあり、どこか眠た気にも見える。
そしてその目の色は金色のように輝いているような…
不思議と目を惹かれたその人物は人混みに紛れて姿を消した。

 図書館で一通り気になることを調べ終えた後、周りも薄暗くなってきたので伊織は帰路につく。
途中まで帰り道が同じだったので、二人で帰ることになった。
帰り道の途中、街路樹が立ち並ぶ静かな道が、そしてその先には交差点があり、十字路となっていた。
<アイデア・成功>
不思議で幻想的にも思える色彩の夕焼けがとても綺麗だ。
夕日と足元に伸びる影が、どこかものさみしく思える。
同時に、伊織はどことなく不気味さを感じた。
周囲を見渡せば、猫はおろか、先ほどまでいたはずの柊も、伊織以外にいたはずの人が一人もいなくなっていた。
不気味なほどに静かだ。

 この不気味な現象に伊織が困惑していると、足元をたたた、と白猫が走り抜けていった。
その猫は、道が交差するちょうどその場所で、ふっと姿を消す。(SANチェック)
そして、十字路の中心、猫が姿を消したその場所で、ゆらりと陽炎のように揺らめく人影のようなものが見えた気がした。
すぐにその影は消えるが、伊織はその人影と、目が合った。(SANチェック)
何かこの状況から変化があるかもしれない、とその場に留まっていたが、しんと静まりかえったこの場所で、伊織は不安になり、その場から逃げるように歩き出す。
とにかく、家を目指そう。人を探そう。何処かにきっと居るはずだ。
サア、と木が揺れる音がすると同時に、「伊織さん」と名を呼ばれる。柊だ。
「急に早足にならないでくださいよ」
何事も無かったかのように、柊は伊織に話しかける。
「?え、あれ?今さっき…」と伊織は戸惑って訳がわからず、言葉が詰まる。
あの時起きたことは気のせいか?と思ってしまうくらいに、元通りに戻っていた。
柊に怪しまれないように、伊織は恐る恐る聞く。
「今さっき、急に静かにならなかったか?」
え?何が?といった柊の様子を確認して、この話を掘り下げるのはやめよう。恥をかくだけだと確信して、「なんでもない」とはぐらかした。
カフェへ行く時に通ったT字路に伊織と柊は再び辿り着く。
この角を曲がれば自宅までもうすぐ…といったところで、にゃあ、という猫の鳴き声が響いた。
猫?この塀の向こうにいるのか?と覗いて見てみたが、いない。
周りを見渡しても、それらしき姿はやはり見当たらない。
しかし、にゃあ、にい、にゃーお、と何度も何度も鳴き声が聞こえてくるのだ。
<アイデア・成功>
いや、違う、塀の向こうにいるにしても、周りのどこかにいるにしても、やけに声が近い。
その声はまるで、この手が届くような距離にいるはずだ。
それなのに、周囲を見渡しても、猫はいない。(SANチェック)
何も見つからず、事態が行き詰まったので伊織はその場を離れる。それ以降、その猫の声は聞こえなくなった。
「猫の鳴き声が…」
「え?猫?どこどこ?」
またしても柊の身には何も起きていない。
戸惑いながらも、今しがた自分の身に起きたことを柊に伝えるが、面白い冗談だと笑われてしまう。
眉間にしわを寄せて「冗談じゃない」と言いたげな表情をする伊織を見て、柊はごめんごめん、と軽く謝り一つ提案をした。
「じゃあ、このへんで。…明日も図書館で待ち合わせましょう、調べたいでしょう?」
どの道この現象については調べようと考えていたところだ、伊織はその誘いに乗った。
今のところは、何が起きたのか結局わからずスッキリしないまま、伊織は柊と別れて家に帰宅した。
一通りの家事を終えて、伊織はベッドに寝転がる。
そして、今日自分の身に起きたことを振り返っていた。
もともとこの周辺は猫が多い。そのため、猫がいることに関しては特に気になる点は無い。
朝見た猫の死骸のニュースも気になる。何か関係性はあるのだろうか。
物事の多くを考えているうちに、いつの間にか伊織は眠りに落ちていた。

 伊織はいつも通りの朝を迎え、準備をして外へ出る。
柊との約束通り、図書館へ向かおうと歩を進めていると、あのT字路を通る。
先日ここでは奇妙なことが連続して起きた。
また何か起きるのではないか、と警戒していたが、伊織は再びこの場所で、違和感を感じて立ち止まった。
T字路の先には交差点で見た、あの黒い男が立っている。
はっきりとした金色の目を輝かせている。
違和感の正体は彼…だけではなく、その後ろにあるはずの塀が無かった。
そして、どことなく背後がぼやけて見える。
霧がかって見えるその向こう側に、舗装されていない道がどこかへ続いているように見える。
<目星・成功>
男がいる場所から更に後ろ…続いている道の途中に何かが落ちていたような気がした。
そして、その落ちているものの周辺は赤く染まっていたような…
男が伊織に対してか、何か言おうと口を開けた。
正体を見定めていると、その男も景色も不思議な光景の何もかもが空気へ溶けるように消えていった。
周りを再び見回してみても、先程広がっていた景色は無い。
塀も何もかもが元に戻っていた。

 昨日から気味の悪いことが続き、心のモヤモヤを残したまま伊織は図書館に辿り着く。
中へ入ると、既に柊がいた。
軽く挨拶をして、伊織は早速今まで起きたことを調べることにした。
T字路や交差点についてなんらかの事故や言い伝えは無さそうだ。
単純に前方不注意による交通事故などが大半だ。
伊織のような現象については、気になる記述があったものの、直接的に結びついているようには思えない内容ばかりだった。
『瞬間移動、あるいは神隠し、それらは古くから存在するとされているが、原因はいずれも分からず信憑性も無い』
『歪み。
この世界を絶対的と信仰する者は多い。
しかしそれは間違いであると、ここに断言しよう。
この世界は非常に不安定な場所だ。
多かれ少なかれ、違う地へとつながっているのだ。
故意か偶然かなどは関係なく、それは事実にほかならない。
また、ナニカを恐れ厭い、封じることもよくあることだ。
その多くは年月のうちにほころび、再び開くようだが。
この歪みを門や特異点と呼ぶ場合もある。』
大層な話になってきた、と伊織は溜息を吐く。
伊織自身、とある事件を調べるためにオカルト知識はある程度存在するが、いざ自身で経験してみると、とても信じ難い。
伊織の様子を見て、柊は「何かわかりましたか?」と聞いてくる。
「ぼちぼち」と答えて、顔を上げると柊が伊織が読んでいる本を覗き見ていた。
「オカルト…ですね」
とても興味深そうに柊は本を見ていたので、伊織は少し気まずそうに、何故オカルトを読んでいるのかを説明する。要するに今まで自分の身に起きていたことだ。
それを聞いた柊はすごい!と言わんばかりに目を輝かせた。
「それが本当だとしたら、とんでもない経験ですよ!」
「もしかして、もしかしなくてもあなたについて行けば私も経験できるかも…あわよくば記事にできる…!?」
好奇心旺盛…いや、貪欲だな。と伊織は半ば呆れて柊を見ていた。
日が沈もうとしている時間になったので、二人は昨日と同じルートで帰ることにした。

 夕暮れ時、昨日も通ったあの十字路に差しかかろうとしていた。
柊と適当な話をして、伊織は柊がまだそこにいることを確認していた、あの不思議な現象は起きそうにない…そう思い始めたその瞬間だった。
突然の静寂が伊織を襲う。耳が痛くなりそうな程に、しんと静まり返っている。
周りを見渡してみても、そこにいたはずの柊も姿を消していた。まただ、昨日と同じあの現象。
しかし、昨日よりも酷く感じるその静寂は、伊織の不安を煽った。
十字路から離れよう、この場所がおかしいんだ。と考えて伊織は足早に来た道を戻る。
そろそろ開けた道に出る頃だ、といったところで、目の前の光景に伊織は思わず足を止めた。
あの十字路だ。
戻って来ている。道を間違えたのかと自分の行動を振り返ったが、いいや、確かに来た道を戻ってここに来たはずだ。
何かがおかしい…そう思いながら、伊織はこの十字路の道の先をよく見る為に、十字路の真ん中に立った。
その時、周りの景色が一変する。次々と起こる怪奇現象に伊織は理解することを半ば諦めていた。
周囲にあった街路樹も、塗装された道路も、そこには無い。
見渡す限りの草原が広がっていて、その景色はとても美しいと思えるほどだ。
<聞き耳・成功>
どこからか、か細い何かの声が聞こえる。
<目星・成功>
どこまでも草原が続いているように見える。
しかし、足元にはけもの道ができており、どこかへと続いているようだ。
草原の遥か向こうに、微かに街のような建物の姿が確認できる。
そして、そこへ続く道の真ん中に何かが落ちているのに気付いた。
その正体を見極めるため、伊織はその場所に近付く。
そこに、横たわる形で猫がいた。この猫は十字路で足元を通って消えていったあの白猫ではないか?と伊織は気付く。
しかし、猫の様子がおかしい。ぐったりとした様子で目を閉じている。
よく見ると大きな怪我をしている…地面に広がる赤はこの猫の血であることに間違いないだろう。
応急処置をしなければ死んでしまうと判断した伊織は、止血する為に自分のシャツの一部分だけを引き裂いて使おうと考え実行に移す。
<DEX×?・失敗>
上手くシャツを引き裂くことが出来なかった。
今度は上手く引き裂こうと、再度挑戦する。
<DEX×?・失敗!ファンブル>
手元が狂いシャツが着れないくらいに引き裂いてしまった。
上半身裸になってしまった伊織は、羽織っていたコートの前チャックを閉める。着ていて良かったお気に入りのコート…
<アイデア・成功>
破れてしまったシャツだが、上手く使えば猫の止血に使えるのでは、とビリビリのシャツを捻って猫の怪我の応急処置をする。
出血は止めた。しかし、自分で動くことが出来ないようで、ここに放置して行けばこの猫は確実に死んでしまうだろう、とわかる。
伊織は弱った猫を負担が無いように抱きかかえ、ここからなんとか抜け出して専門の動物病院に診て貰おうと考えた。
処置され、伊織に抱きかかえられた白猫は嬉しそうににゃあと鳴き、ザリザリと伊織の手を舐める。
とにかく、気になるのはあそこに見える街だ。あそこに向かえば何かヒントが得られるかもしれないと伊織は悩むまでもなく歩き出した。事は刻一刻を争う。
歩き出してすぐに、伊織は背後から声をかけられた。見渡す限りの大草原に、人影は先程まで無かったはずなのにと疑問に思いながら、伊織は声のした方に振り返る。
僅かな死角からこちらを見ている男がそこにいた。そしてその男には伊織は見覚えがあった。
その男の気だるげな目は、伊織が抱きかかえている白猫に向けられている。
<目星・成功>
その男の背後が歪んでぼやけて見えることに気が付く。
そして、男の目はまるで…猫のようだ。
白猫をじっと見たあと、男は「手当てしてくれたんだな、ありがとう」と感謝の意を述べる。
話が通じる相手だとわかった伊織は男に「ここは一体どこなのか?」と尋ねる。
男は「知らなくていいことの方が多い」と答えた。
伊織は深く追求はせず、猫の容態を気にしながら「ここから出る方法は何か知らないか」と尋ねると、男は自分の背後の空間を伊織に見せて示す。空間が大きく歪んでいる。
伊織が目指そうとしていた街の方を見て男は口を開いた。
「あちらは行くべき道ではない。その子も、まだ早い」
視線を歪んだ空間へ移す。
「帰るべきは向こう側だ。元はといえば私のせいで、すまない」
伊織は歪んだ空間へ近寄り、中を覗いてみると、歪みの向こう側には見慣れた十字路が見える。
消えたと思われていた人の往来も確認することができ、伊織は安心感を覚えた。
男の言う通り、この空間を通れば元に戻れるだろうと希望を持った伊織の後ろにいた男は「その子を助けてやってくれ」と伊織に頼む。
勿論そのつもりだと伊織は頷き、歪んだ空間の中へ足を踏み入れた。
<目星・成功>
歪んだ空間を通る際に伊織は後ろを振り返った。
その男には猫のような耳と尻尾があるように見えた…いいや、気のせいかもしれない。
<門をくぐる・MPの消費>

 バランスを崩しながらも、伊織は無事に地に足をつけた。
見慣れた街並みの中、十字路の真ん中に伊織は立っていた。
先程までいた広い草原と猫のような黒い男はいない。しかし、伊織の腕の中には怪我をした白猫が浅い呼吸を繰り返している。
急いで病院に向かわなければ。伊織は直ぐに動物病院の方角へ走り出した。

 後日…
あの白猫は獣医に診てもらって直ぐに入院となった。
その治療が終わり予定の引き取り日、伊織は動物病院に白猫を迎えに行く。
治療費を支払おうとしたが、不思議なことに獣医は「治療費は既に貰っています」と言った。
支払った記憶がないと呆けていると、「あなたの知り合いと思いますが、その男性が先に支払っていきました」と獣医は続けて答える。
一人、心当たりがあった伊織は獣医に「その人の特徴は」と聞くと「全体的に黒い服装で、髪はボサッとしていて眠そうな顔をしてましたね」と答えた。
あの草原で会ったあの男だと伊織は確信する。
「お釣りは渡しておいて欲しいと言われていてね」と、病院側がご丁寧に封筒に入れてあったお釣りの分を伊織は受け取った。
治療をしてくれた獣医にお礼を言って、伊織は白猫が入った動物用のキャリーバッグを手に持ち一人と一匹、帰路についた。

一方、柊は突然姿を消した伊織と再会し、若干興奮気味に何があったのか聞いてきた。
自分の身に起きたことを大部分話すと、記事にしたいと詰め寄ってきたため、記事にするには中身が薄過ぎるからやめておけとはぐらかしておいた。

 家に帰ると、郵便ポストに手紙が届けられていた。
中に入り、白猫をキャリーバッグから出してやった後にその手紙の封を切る。

”先日は私の失敗のせいで厄介事に巻き込んですまなかった。
そして、あの子を助けてくれてありがとう。
おそらく、会うことは二度とないだろうし、そうであって欲しいと心から願う。
だが、気をつけてくれ。
こういうことは思いのほか、身近に潜んでいるものだから。”

差出人は無記名だが、恐らくあの男が書いたものだろうと推測できる内容だった。
そして、封筒の中には綺麗な音がする鈴と、シルバーのモチーフが入ったブレスレットが入っていた。

 その手紙以降、あの男からの接触は無い。伊織はいつもの日常を過ごしている。
助けた白猫もすっかり元気になり、あの時手紙に入っていた鈴を首輪に付けてあげていた。
猫はすっかり伊織に懐いてしまい、そのまま伊織の家に住み着いている。ペットOKな物件なのでその辺りの心配は無いが、初めてのペットなので最初のうちは不安が多かった。
この不思議な体験もいつかは忘れてしまうのかもしれない。あの男の言葉通り何も知らずに忘れてしまうのが一番良いのだろう。
伊織は、この体験を忘れないように手帳に書き留めた。
自分の目的達成の鍵になるかもしれない。
伊織が物思いに耽っていると、外からちりん、とあの鈴の音が聞こえてくる。
うちの猫が散歩から帰ってきたんだな、と音のした方を見ると、うちの猫だけではなく、もう一匹の猫もついてきたようだ。
見慣れない黒猫…いや、どこかで見たような…?
気のせいだろう、と考えていた矢先、二匹の猫が小走りで家の中に入ってくる。
床にはくっきりと猫の足跡が、二本の道を作る。
「ああっ」と思わず声を上げた伊織は濡れタオルを片手に、家の中で隠れんぼをする二匹の猫を追いかけた。


このエピソードの登場人物